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ラノベや漫画の発行部数、売上部数など部数の種類、意味、違い

ラノベ入門

『全世界累計5億部突破‼』
『コミックス累計一億部突破‼』
『シリーズ累計1000万部突破‼』ほか。
ラノベや漫画が好きな人であれば、これらのフレーズを単行本の帯、雑誌の表紙、公式サイト、広告などで1度は見たことがあると思います。
一種の宣伝文句。キャッチコピー⁉
『ランキング1位』や『視聴率40%超』、『興行収入100億円突破』みたいなのと似たようなもので、作品の内容や質に関係なく人の興味を引く力があります。

それに対しての感想といえば、
「5億も売れたのかよ」「1億人も読んだのか」「1000万ということは10億以上儲かっているの?」などさまざま。
そこから、売れるということは人気がある、人気があるということは面白い、面白いならちょっと試しに読んでみようかといった具合に購入へとつながっていきます。

ただ、この5億とか1億という数字。
本が売れた数ではありません
一般的には、発行部数と呼ばれています。

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そもそも発行とは?部数とは?

発行』という言葉の使い方の一例を挙げてみると、
紙幣を発行する
株式を発行する
旅券を発行する
請求書を発行する
新聞を発行する
雑誌を発行する
単行本を発行する
この中で私が経験したことのあるのは『請求書の発行』です。ある企業から仕事を請け負ったときに、代金を請求するため作った覚えがあります。
そう、『作る』。
ただ、この理屈だと食品や家電などの製品も当てはまりますが、『冷蔵庫を発行する』とは言いません。『冷蔵庫を製造する』もしくは『冷蔵庫を生産する』という言い方になると思います。
そのため、発行を用語として用いる場合、『紙やデータなどに記載また印刷する』ことが大前提。
さらに、報告書や企画書など社内の書類は除外で、対象は流通や取引を目的とした印刷物に限定されます。

次に『部数』。
似たような言葉に枚数、冊数がありますが。
使い方の一例として、
1.新聞を1枚とって 
2.新聞を1部とって
3.新聞を1冊とって
基本は2で、1も使うことがあるかもしれないが、3はまず言いません。
次に切手だと、
1.切手を1枚とって 
2.切手を1部とって
3.切手を1冊とって
1が正解で2、3はありえません。
最後に単行本や文庫本などの本。
1.本を1枚とって 
2.本を1部とって
3.本を1冊とって
1は論外として、まあ、一般人なら3です。
以上より、部数という言葉を使うのにふさわしいのは新聞のようですが、発行した数を表すときに限り?本でも使われているようです。
確かに、発行冊数(はっこうさっすう)はなんか言葉に出しにくそう。
あと、仕事で企画書などを作るとき「10部コピーして」と口にすることはあっても、「10冊コピーして」とは言いません。

さて、この発行に部数を加えた発行部数ですが、印刷証明付発行部数と公称発行部数の2種類あります。
前者は日本雑誌協会が印刷工業会の協力を得て公表しており、後者は出版社自らが自己申告しています。
印刷証明付は第三者機関による調査なので、こちらのほうが信頼性は高そうです。

出版部数、印刷部数など発行部数以外の部数の種類と違い

発行部数の類義語みたいなの、けっこう多いです。
ただ、実際よく耳にするのは、印刷部数と初版部数、売上部数の3つのような気がします。

・出版部数
主に出版社が発行した本の数。意味としては発行部数と同じだが、新聞では用いられない。

・印刷部数
紙などに印刷した数。本、雑誌、新聞のみならずプリンター等で私的にコピーしたものも含む。

・初版部数
初めて出版した本の数。発行部数また出版部数と同じ意味で、この数字に重版・増刷・改訂分を足していくと累計発行部数になります。

・配布部数
有料、無料問わず本などを広く配った数。

・流通部数
販売を目的として書店等に本などを配った数。

・売上部数
実際、推定問わず書店などで購入されたと本などの数。一般的に、推定売上部数として用いられる。

・販売部数
書店等で販売されている本などの数。売上部数と同じ意味で使われることも。

・実売部数
実際に書店等で購入された本などの数。リアルな売上部数だが、出版社などから公表されることはほとんどない。

・出庫部数
倉庫や保管場所から配布また流通目的で出された本などの数。

・在庫部数?
倉庫などに保管されている本などの数。返品が多いと思われるだけなので、公表することはありえない?

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なぜ売上部数ではなく発行部数を公表するの?

一つの作品で、売上部数と発行部数を比較したとき、数が多いのはどちらか?
売れた数が作った数を上回ることはありえないので、当然発行部数となります。
そして、気になるのはその割合。
新海誠原作の『すずめの戸締まり』を例に挙げると、
主な書籍として
・小説が角川文庫(2022/8/24発売)と角川つばさ文庫(同年10/13発売)の2種
・漫画がアフタヌーンKC全3巻(2023/3/23、同年9/22、2024/2/22発売)
があります。
公表されている累計発行部数は35万部。ただ、これは2022年11月初旬時点なので、おそらく漫画は含まれていません。
一方、売上部数。本当は実売部数で比べるべきだが不明なので、発行部数と同年月の推定売上部数を見てみると、角川文庫が約17万部、角川つばさ文庫が約2万部で、計19万部。
35対19
だいたい発行部数の半分くらいが売上部数といえるのではないかと思われます。

さて、この数字を100万倍かけて比較してみましょう。
3500万部突破‼ 1900万部突破‼
インパクトがあり受け手の印象がいいのは、口に出すまでもなく前者です。
これが作品のアピールで発行部数を選んだ理由。
できるだけ大きな数字を見せることで、消費者の心を掴もうとしているわけです。

発行部数に電子書籍を含むのはおかしくない?

最近の発行部数の表記では、
100万部(電子書籍含む) 4000万部(デジタル版含む)
こんな感じなのが増えてきました。
もちろん狙いは、数字を少しでも多く見せることです。

さきほどから言っているとおり、発行部数は紙等に印刷して作った本などの数です。
ネット上に文章や絵を載せることを発行というのであれば、私が運営しているこのブログも該当してしまいます。一つのブログで1部?1000記事以上あるから1000部?
そんなこと誰も思いませんよね。

では、発行部数に電子書籍を含むとはどういう意味なのか?
どの出版社も説明していないようなので推測ですが、各電子書籍サイトでダウンロードされた本の数。ようするに、電子書籍の実売部数を含んでいるのではないかと。
だったら、紙の実売部数を公表してそれに加えなさいと言いたくなってしまいます。

発行部数の比較に意味はあるの?

100万部、100万部(電子書籍含む)、コミックス100万部、原作小説100万部、累計100万部、シリーズ累計100万部、全世界累計100万部など。
同じ100万部でも、表記の仕方はさまざま
また説明もないので、シリーズはたぶんスピンオフを含む?全世界って196か国?などと見た人各々が勝手に想像するしかありません。

発行部数の考察でもう一つ重要になってくるのが巻数です。
100巻以上続いているものもあれば、5巻未満で打ち切りになってしまうものもあります。
単巻で100万部といえばベストセラーあるいはミリオンセラーと呼ばれるほどのヒット商品ですが、100巻で100万部では失敗作といわれても不思議ではありません。

1巻あたりの発行部数のことを、巷で巻割なんていう風に読んでいます。
巻割で比較してこそ、発行部数の大小は意味を持ってくるのです。

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