好きな人ができると、その人の好きな食べ物や飲み物、出身、家族、趣味、得意なスポーツなどいろいろなことを知りたくなりますよね。
ラノベに嵌ったファンもこのときと似たような気持ちで、お気に入りのキャラの授業編、過去編、恋愛編など新しいストーリーに対する欲求度がどんどん増してきます。
そのファンの要望に応えるべく誕生したのが、スピンオフ。
英語で「spin-off」と書きます。
木の幹から出る枝のように、一つのものから新しいものがいくつも生まれること(派生)、あるいはその副産物。
ひとつ(一例として小説)の原作から漫画、アニメ、ゲーム、フィギュアなど次々にメディア化されるメディアミックスとよく似ていますが、スピンオフはもっと広義的で、原作のタイトルに別のタイトルを追加して新たなコンテンツを生み出します。
よくわからずに使っている外伝の本当の意味とは?
外伝を英語で表すと「side(脇の) story(物語)」ですが、外伝の“伝”は「伝記」からきています。
その伝記とは、記録や文書、あるいは個人の生涯を綴った日記のようなものを指します。
主要な伝記を『本伝』というのに対して、本伝の物語に直接関係しない付属的、補助的のような伝記を「外伝」と呼んでいます。
「ラノベライブラリ」といった作品があったと仮定しましょう。
この作品の主人公はラノオ。
ラノオはラノライ学園に通っています。
ラノオには、ラノオウ学園に在籍するラノゾウという友人がいます。
そして、そのラノゾウを主人公とする伝記を「ラノベオウコク」とします。
このケースだと、「ラノベライブラリ」が本伝で「ラノベオウコク」が外伝です。
「ラノベオウコク」の小説を販売するときには、「ラノベライブラリ」の外伝だとアピールするために、タイトル「ラノベオウコク」の傍に「ラノベライブラリ外伝」という言葉がついたりします。
また、本伝と作者が違う場合、外伝の表紙には外伝の作者(著者)の名前の横に、本伝の原作者(監修)の名前が入ります。
本伝は、ラノベや漫画でいうところの「原作」や「本編」にあたります。
ようするに、本編とは別の形で物語が進むサイドストーリーやアナザーストーリー、番外編、前日談、後日談などはすべて外伝扱いです。
ラノベで外伝といえばスピンオフでサイドストーリー
1本の幹から次々に出る枝のことを「スピンオフ」と呼ぶと、冒頭で述べました。
「スピンオフ」と「派生作品」は同じ意味です。
そして、1本の幹は「本伝」。各枝は「外伝」に該当します。
何が言いたいのかというと、「スピンオフ」という用語は伝記(小説も含む)のみならず、漫画やアニメ、ドラマ、映画など他のメディアの派生作品に対しても使うことができます。
ラノベの前日談や後日談、番外編、SSは、原作の主人公メインでストーリーが進むケースが少なくないため、スピンオフとはあまりいいません。
ラノベにおいて、スピンオフと呼べる最低条件は「原作の主人公とは別の人物を主役に抜擢する」ことです。
その人物は、必ずしも原作に出ている必要はありません。原作の主人公のみならずわき役ともまったく面識のない人物(スピンオフ限定のオリジナルキャラ)でも問題なく使用できます。
ただ、原作の登場人物で特に読者の人気の高いキャラを主役にしたほうが、売り上げは伸びやすいです。
本編とは別の人物を主人公に据えれば、当然、サイドストーリーとなります。この言葉と似たものに、アナザーストーリーがありますが、こちらは登場人物が同じなだけで、世界観が違ったり、パラレルワールドとして使われたりすることがあるので、サイドストーリーとは一線を画しています。
また、名前が同じでもキャラ崩壊と呼ばれるほどコメディーに特化したストーリーになると、これも外伝としてはよくても、スピンオフとしてはいまいちなものとなります。
ラノベのスピンオフは主人公が違うだけで、他の世界観や時系列、登場人物の性格などは原作に合わせなくてはなりません。
企業で例えるなら、原作が親会社で、スピンオフが子会社です。
また、スピンオフは1巻で完結ではなく、2巻、3巻と続くシリーズ化を前提としたものが多いです。
人気スピンオフともなると、アニメ化だけでなく、子会社が孫会社を使うように、スピンオフのスピンオフという作品まで出すことが可能になります。
長期連載を見込むスピンオフは、小説にしても漫画にしても、たいてい原作者とは別の人物が描きます。
許可を出しているだけでほとんど制作にかかわらなくても、作品の名前や設定を貸している以上、まったく無関係ではないので、この場合の原作者は原案・監修という位置づけになります。
ラノベの前日談、後日談、番外編とは?
これらは本編が完結した後に、世に出ることが多いです。
前日談(ビフォーストーリー)は、本編が始まる前の話。主人公の過去編が主で、タイトルに0巻とついたりします。
後日談(アフターストーリー)は、本編が終わった後の話。主人公のみならず、わき役にもそれ相応に焦点が当てられます。恋愛ものであれば、結婚して子供が生まれたとか、異世界ものであれば、元の世界でどのような職に就いたとか。
前日談が少し暗めのストーリーが多いのに対し、後日談はいかにもハッピーエンドという感じのストーリーが目立ちます。
番外編は本編の合間に起きた出来事の話です。
タイトルの一例として10.5巻、15.5巻。
スピンオフは本編と同じ時系列、別の場所で起きた話がメインになったりしますが、番外編では本編の時系列と被ることは通常ありません。
前日談、後日談、番外編のいずれも、本編の補完としての意味合いが強く、原作者自らが筆を執る傾向があります。
ラノベのSSには二通りの意味がある
数はそれほど多くありませんが、本編のタイトルに数字ではなく「SS」という英文字をつけて本を販売することがあります。
この「SS」には、サイドストーリー(side story)とショートストーリー(short story)の二通りの意味があります。
前者は先ほどから言っているように、本編と同じ世界観で進む脇の話。ファンサービス的な要素が強く、作者からするとそれほど重要ではないことになります。
後者は直訳すると「短い物語」。ようするに、短編小説のことを指しています。ただ、4、50ページ程度の小説を1冊の本として売ることは通常ありません。4つか5つの短編小説を一つにまとめて販売する傾向があります。ですから、トータルのページ数は本編とそれほど変わりません。
また、例外として二次創作物(同人誌)のことを「SS」と呼ぶことがあります。
小説であれ漫画であれ原作を一次創作物(一次作品)というのに対し、原作から派生して生まれたゲームやポスター、カードなどの作品はすべて二次創作物です。
ただ、一般的に原作者の許可を得て販売する二次創作物は「SS」とは呼びません。
ある二次創作のラノベに対して「SS」という言葉を使うときは、たいてい原作者の許可を得ず勝手に制作、発表している素人のWEB小説を指します。
そんな事情もあってか、原作者自らが書いた本のタイトルに「SS」という単語をつけるケースは年々少なくなっています。
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